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コチラ 抗真菌薬について軽く触れたので、今度は真菌を学びましょう。”カビ”と一括りにせず、きちんと分類。これも簡単に済ませておきます。
真菌感染については特に免疫状態を考慮する必要があります。このような”下調べ的”な患者背景という要素はこれまでもちょくちょく述べていましたが、詳しくは後述する『感染症診療の原則とは?』という項目で触れます。しかし真菌のまとめを述べると言う都合上、ここでも少し話題にします。まずは
Candidaから。
1)
Candida 真菌でヒトに常在しているのは
Candidaで、皮膚・口腔・腸管・泌尿器などに幅広く存在しています。ということは、感染症としては皮膚・粘膜といった
表在性のものと身体の中の
深在性のものとに分かれそうだと想像がつきますね。
表在性は基礎にHIV感染、ステロイド、糖尿病と言った細胞性免疫障害のある時に多く発症します。深在性は持続する好中球減少症や広域抗菌薬使用でも症状が改善しない場合、既に
Candidaが血液以外の検体培養で検出されている状態で多くのカテーテルやドレーンが入っている場合などが発症のリスク。この深在性ではターゲットになる臓器に特徴があり、血流感染(カテ感染、心内膜炎)、肝・脾膿瘍(播種性カンジダ症)、尿路感染、眼内炎、髄膜炎、骨髄炎といった疾患を起こしやすくなります。眼内炎は知らず知らずの内に発症していることがあるので、カンジダ血症を見たら
眼科医に診察をお願いしましょう。また、肺は苦手なので、肺炎を起こすことは極めて稀とされています。
問題点は、診断の難しさです。培養で
Candidaが検出された時にそれが単なる定着なのかそれとも本当に感染症なのか、この見極めが大事になります。特に広域抗菌薬がドンドン使われていたら、他の菌が死滅して
Candidaだけがポツンと残るということもあります。定着か感染か、これを判断するには
Candidaの性格を知る必要が出てきます。細菌感染で学んできた知識を使うと、知る必要のあるものは、
Candidaの好きな臓器、そして感染のリスクファクター。これを把握しましょう。臓器は今しがた述べたので、リスクファクターを紹介します。
・広域抗菌薬の使用既往
・長期の病院滞在やICU滞在
・ステロイド使用などの免疫抑制、悪性腫瘍、糖尿病、HIV感染症
・栄養不良
・手術後、特に腸管や心臓
・熱傷、未熟新生児
・カテーテル使用、中心静脈栄養
・
Candidaの定着状態
上記となります。これを見ると、細胞性免疫低下や好中球低下といった”
内科的”なハイリスクと、バリア機能の異常である”
外科的”なハイリスクに分けられるということが分かると思います。この2つのリスクを参考にして定着か感染かを判断。また、一見健康そうな人に
Candida感染、特に表在性の感染症が多いですが、それを見たら、必ず背後にHIV感染などの免疫抑制がないかを見なければいけません。
ちなみにカンジダスコアCandida scoreというのもありまして、どういう時に
Candidaを定着として見ることが出来るか、という1つの指標になっていまして、以下の式からなります。
Candida score = 1×(複数ヶ所colonization)+1×(手術)+2×(severe sepsis)+1×(TPN)
論文では、セッティングが好中球減少のないICU入室患者さん。3点以上をカットオフにした場合、侵襲性カンジダ感染症の陽性的中率13.8%、陰性的中率97.7%となっています。2点以下なら様子見可能、ということが示唆されるでしょうか(Usefulness of the "Candida score" for discriminating between
Candida colonization and invasive candidiasis in non-neutropenic critically ill patients: A prospective multicenter study. Critical Care Medicine. 37(5):1624-1633, May 2009)。
さて、一口に
Candidaと言っても、
albicansとnon-
albicansに分類され、後者には多くの種類があります。通常はalbicansの病原性が強くて多くのカンジダ症の原因になります。しかし、non-
albicansでは耐性が問題になってきます。どの様な抗真菌薬がどの様な
Candidaに効くか、青木先生による表を用いましょう。

この様な性格になります。患者背景を押さえて、感染か定着かの区別。そしてCandidaの種類による抗真菌薬の効果。これを認識しておきましょう。臨床的にリスクが揃っており広域抗菌薬の治療でも症状が改善しなければ、β-D-グルカンの値にとらわれず抗真菌薬を開始するという割り切りも大切です。
2)
Aspergillus Aspergillusの病態は4つ。
・単なる定着としてのアスペルギローマaspergilloma
・アレルギー(ABPA:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症。喘息患者に発症。↑IgE、↑好酸球)、
・慢性壊死性アスペルギルス症
・侵襲性肺アスペルギルス症
ただし多少のオーバーラップは存在し、定着状態にアレルギーや侵襲病変が重なることも多いです。ここでは最も重篤な侵襲性肺アスペルギルス症について軽く述べます。
好中球減少や細胞性免疫異常が遷延する患者はハイリスク。具体的には
・長期、重篤な好中球減少症
・臓器移植(特に肺移植)
・骨髄移植
・HIV感染
・ステロイドや免疫抑制剤の使用
・血液疾患(白血病、リンパ腫)
といったものが挙げられます。ただし固形がんの化学療法では
Aspergillusは非常に稀。この時は
Candidaが問題になります。
Aspergillusは環境のどこにでも存在し、通常はこの分生子を吸入することで感染。ということは、
肺が主なターゲットだと分かりますね。病院の改築時などは分生子が大量に舞うので、集団発生を起こすことがあります。この肺から副鼻腔に広がると、そこから中枢神経へと到達。後は肺から血管に浸潤していき全身に広がることもあります。大雑把に述べましたが、この様に感染の広がりを覚えましょう。他の感染ルートとしては、傷口などから直接に皮膚や角膜へ到達することもあります。
この疾患は極めて非特異的な症状であり、胸部CTのhalo signは他の真菌症や
P. aeruginosaでも認めると言われます。ガラクトマンナン測定も、どういう状況で、何を考えて検査するかで有用性が変わってくると思いますし、ピペラシリン・タゾバクタムの使用で偽陽性になることもあるそうです。
血液培養からほとんど検出されないことが知られています。よって、上記ハイリスク患者ではまず疑うことが大事。場合によっては経験的に治療を開始しなければならないこともあります。理想的には組織を持って来ること。生検やBALで菌糸を見つけることが大事になります。
3)
Cryptococcus 土中、鳩の糞の他、野菜などにも存在します。吸入することで感染します。20%ほどは免疫不全がなくとも見られるのですが、特にリスクとなるのが
細胞性免疫不全です。ステロイド投与や移植、悪性リンパ腫、糖尿病、そして何といってもHIV感染。吸入するということは肺に病変を作ります。しかし、細胞性免疫に障害があると播種性感染症となり、特に髄膜炎が多くなります。診断は血清や髄液の抗原検査、培養によってなされます。
4)
Zygomycetes いわゆる”ムコール症”の原因真菌。彼らは広く自然界の土壌に存在します。病原性が低いので、感染は極めて稀。
著しい免疫抑制の患者さんに発症することがあります。感染のリスクファクターは、
Aspergillusのリスクに加えて
・糖尿病(特にDKA)
・デフェロキサミン(鉄キレート)の使用
・外傷、重症熱傷
・栄養障害
となります。侵入経路は吸入によるものが多く、他には熱傷や外傷からの侵入も考えられます。病型がいくつか分かれていて、それを以下に記します。
・鼻腔から脳の病変(rhinocerebral type)
・肺病変(pulmonary type)
・皮膚病変(cutaneous type)
・胃腸病変(gastrointestinal type)
・中枢神経系病変(CNS)
・その他の病変(miscellaneous type):心、骨、腎、膀胱、カテーテル
これらの中でどのタイプになりやすいかは、基礎疾患により予想が付きます。糖尿病患者やデフェロキサミン使用ではrhinocerebral typeが多く、長期間の重篤な好中球減少症ではそれに加えてpulmonary typeも多くなります。栄養障害があればgastrointestinal typeのリスク。
ムコール症は血管侵襲性が強いので、
Aspergillusと同じような進展をします。鑑別も重要で、組織を持って来ることと培養することでなされます。
Aspergillusと同様に血液培養は殆ど陰性。
基本的に効く抗真菌薬はアムホテリシンBのみなので、他の抗真菌薬を使用している時にも発症することがあり、注意を要します。特に
ボリコナゾール投与中のBreakthroughとして出てくることが多くなりました。治療については、外科的切除も併せて行います。どの真菌症にも言えることですが、治療の基本は可能ならば免疫抑制状態の解除です。