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カテゴリ:★思うこと・医学一般
  • かゆい、ねむい、やすい、たかい
    [ 2012-02-17 22:46 ]
  • 感染症診療 Starter & Booster:第13回~感染症診療の原則とは?-1
    [ 2012-02-14 20:41 ]
  • 救急外来で使用する検査項目~くも膜下出血に対するCT
    [ 2012-02-14 19:43 ]
  • 救急外来で使用する検査項目~脳梗塞に対するMRI
    [ 2012-02-11 20:14 ]
  • 感染症診療 Starter & Booster:第12回~「カビ」を分類する
    [ 2012-02-07 23:22 ]
  • 輸液 Starter & Booster:第8回~おしまいのどんぶり勘定
    [ 2012-02-04 18:09 ]
  • 感染症診療 Starter & Booster:第11回~抗真菌薬について軽く
    [ 2012-02-02 21:40 ]
  • 輸液 Starter & Booster:第7回~救急外来の輸液
    [ 2012-02-02 21:17 ]
  • 診断推論 Starter & Booster:第11回~疾患そのものを知るという大前提
    [ 2012-02-02 21:03 ]
  • 救急外来で使用する検査項目~NT-pro BNP
    [ 2012-02-01 00:55 ]
かゆい、ねむい、やすい、たかい
 H1ブロッカーはH1受容体を抑え込んでヒスタミンが出てこないようにする抗アレルギー薬の一つ。開発が結構進んでいて、今は副作用が随分と少ないものが出ています(ザイザル®が最たるものでしょうか)。その副作用は、眠気や口渇など、中枢性H1受容体への作用と抗コリンの作用がメイン。これらや他の副作用などを軽減するために製薬会社はあれやこれやと頑張っている様子。

 昔ながらのH1ブロッカーの代表例はレスタミン®で、成分はジフェンヒドラミン。何といっても安いし効果もある。しかし眠くなる。。。自分の経験的には、飲んで数時間するとボーっとしてきます。

 薬局にもこれは売ってますね。「レスタミンコーワ糖衣錠」と「レスタミンUコーワ錠」でして、箱からして昔ながらという雰囲気。自分が見つけたのは後者。75錠入りで997円でした。1錠にジフェンヒドラミンが10mg入っています。
 さて、これを前提として市販の睡眠薬。ドリエル®が日本で初めて売られましたが、その後色々な商品が出ました。成分は全部一緒ですけど。これはH1ブロッカーの副作用を逆手に取っていまして、成分はジフェンヒドラミン。1回で服用するのはジフェンヒドラミン50mg換算。大体どの薬も1回300円くらいの計算です。
 ジフェンヒドラミン50mg=300円ということは、、、


ドリエル®など:1mg=6円


 ここで、ん…?と思います。レスタミンUコーワ錠は75錠で大体1000円。1錠にジフェンヒドラミン10mgだから、ジフェンヒドラミン750mg=1000円です。計算すると、、、


レスタミンUコーワ錠:1mg≒1.33円


 何と。ドリエル®さん高いっすね。。。レスタミンUコーワ錠5錠飲んでも効果は一緒で安上がり、しかもビタミン入ってるので、こっちの方が良かったり。。。レスタミンコーワ糖衣錠の方は80錠で630円と更にお買い得(ビタミン入ってないです)。


レスタミンコーワ糖衣錠:1mg≒0.8円


 こうしてみると、ドリエル®はススキノを彷彿とさせます。

 ただ、自分は不眠時にはこれを飲むと良いと言っているわけではありませんので。。。いわゆる不眠には生活リズムの立て直しが一番。ポイントを以下に列挙。

・早寝をするのではなく、まずは早起きを習慣づけること。
・午後3時以降はお昼寝をしない。お昼寝はするにしても上限30分間。
・夜寝る前に運動したり飲んだり食べたりしない(お酒なんて以ての外)。
・眠くなくても決まった時間にお布団に入る。
・電気は消す。テレビも消す。携帯電話もいじらない。
・眠ろう!という気構えでなく、眠りがこちらを捕まえてくれるような心持ちで。

 これを数週間続けてきちんと睡眠日記(睡眠時間や時刻をお昼寝含めて書く)をつけていれば、大体は少しずつですが良くなってきます。それをせずにお薬というのはお勧めしませんし、患者さんにもそう話しています。

 オススメな書籍に”自分でできる「不眠」克服ワークブック:短期睡眠行動療法自習帳”というのがあります。不眠に困ってる方々も医療者も読む価値あり。

 ちなみに、高齢の男性患者さんの尿閉の原因に、風邪薬やこのH1ブロッカーの服用が挙げられます。これらは抗コリン作用がありますので。たまに救急外来で見るので、問診でうまく聞いてみると良いですよ。
by m03a076d | 2012-02-17 22:46 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
感染症診療 Starter & Booster:第13回~感染症診療の原則とは?-1
目次→コチラ

 ここまで色々とお話をしてきました。臨床微生物学、抗菌薬、そして真菌と抗真菌薬についても。ようやく感染症診療の総論とも言える、原則についてです。

 青木先生や大曲先生が仰っているように、論理的に以下の段階を踏んで診療に当たることが大事です。これは絶対に外さないこと。大曲先生の著書(感染症診療のロジック)から抜粋。

①患者背景を理解する
 ・年齢や基礎疾患
 ・曝露
 →微生物を推定する
②感染臓器を考える
 ・診断過程が進めやすくなる
 ・重症度を把握できる
 ・どのような微生物が原因か予測できる
 ・経過観察に役立つ
③原因微生物を探す
 ・微生物の推定:患者背景、感染臓器から
 ・微生物の同定:検体提出、グラム染色や培養検査などで微生物の絞り込み
④抗菌薬を選択する
 ・empiric:ターゲットを推定し、それに対して有効な抗菌薬を投与
 ・definitive:起因菌と感受性結果により抗菌薬を再選択
⑤適切な経過観察
 ・各疾患の自然経過の理解
 ・よくならない場合の仕切り直し、対処法


 これが絶対的なポイントになります。

 感染症診療が得意という医師は、オールラウンドな医師でもあるんです。それ何故でしょうか?思うに、この原則がカギなのではないでしょうか。もう少し感染症っぽさを取り除いてエッセンスを抽出すると


背景を捕えて鑑別疾患の初期ランクを設定し、症状の原因となる臓器/疾患を問診・診察・検査により把握し、適切な治療方法と経過を理解することで患者さんを治癒の方向へ持っていく


こうなります。この流れは、私が診断推論でお話しした原則、全科に共通した原則でもあるのです。医療の原則とも言えるかもしれません。この大切なことを、少し詳しく見ていくことにしましょう。

1)患者背景の理解
 患者背景を理解することで、どの部位が感染しやすいか、原因微生物の種類などを考える際に可能性の重みづけが出来ます。肺炎でもCOPDや気管支拡張症の既存症がある、大酒家であるなどによって原因菌の可能性ランキングが変わってきます。また、高齢者は症状が非特異的で診察もはっきりしないという情報を知っていれば、ある程度の検査が必要だなとなってきます。先ほどの真菌ではやたらとリスクファクターが出てきましたが、こういう背景をきちんと得ておくことが非常に重要となってきます。どんな基礎疾患があるのか、性別や年齢、ライフスタイルなどは言うに及びません。前医で抗菌薬を使用されていたら、それがどの様な抗菌薬で、投与期間や投与量がどのくらいであったというのも有用な情報になります。

 患者さんの生活する場も重要で、それによりまずは市中感染か院内感染(より広く言うと、医療関連感染)かに大きく分けられることになります。院内感染はやはり特殊で、尿路や肺、カテ、オペ部位が感染部位として多くなり(これらで8割を占めると言われます!)、他には偽膜性腸炎なども目にしますね。原因菌も院内感染では複雑になります。常にP. aeruginosaやMRSAなどに目を配らねばいけません。
 
 感染症を考える際の患者背景には随分と特殊なものがあります。これは別個に覚えておきましょう。以下のようなものが挙げられます。

a)皮膚や粘膜のバリア障害(ルート、外傷/手術/熱傷、NGチューブ、化学療法など)
b)管腔の通過障害(腹部手術、がんによる閉塞、誤嚥など)
c)好中球減少と貪食能や遊走能の低下
d)細胞性免疫低下
e)液性免疫低下


 c)~e)に関しては、単に免疫不全と一括りにするのではなく、免疫のどの機能が障害を受けているのかを調べましょう。実際の患者さんではどれか単独と言う訳ではなく、好中球減少と皮膚のバリア障害など、複数の要素が絡んできます。また、一部のがん患者さんでは易感染状態が時間とともに変化していきます。特に造血幹細胞移植ではくっきりと分かれている傾向にあるので、それを知っておくと感染の原因微生物の見当がつきます。

 以下にa)~e)の各要素を具体的に見て行くこととします。

a)皮膚や粘膜のバリア障害
 バリア障害があれば、当然そこからの侵入が予想されます。皮膚バリア障害では皮膚の常在菌が原因となりやすく、また、外界の菌が侵入しやすい状況なので、GPCや医療施設内にいるP. aeruginosaなどにも注意が必要。粘膜バリア障害では、溶連菌や嫌気性菌といった口腔内常在菌が問題となります。粘膜障害に伴う痛みのために嚥下障害が起こり、誤嚥による呼吸器感染を引き起こすこともあります。

b)管腔の通過障害
 これがあれば、その”閉塞”が原因となり感染症を引き起こします。最初の方にお話しした、GNRの感染形態でしたね。抗菌薬のみならず、その閉塞の解除を行うことが必要になります。

c)好中球減少と貪食能や遊走能の低下
 一般に、炎症となる部位にはまず好中球が集まってきて、患者さんには症状が出ます。好中球減少はその第一線の防衛が崩れていることになるので、症状が乏しくなり得ますし、免疫不全の中でも要注意。好中球減少の原因としては、血液疾患、化学療法、薬剤などが挙げられ、この状況で発熱すると発熱性好中球減少症ということになります。この疾患は大まかな特徴があり、発熱してから5日間と言う日数が1つの区切りになります。発熱して5日未満で大きな問題になるのが、P. aeruginosaなどのGNR、そしてMRSAやMRSEといった多剤耐性のGPCです。治療を行っても、発熱が5日以上続けば一部の真菌感染、特にCandidaAspergillusの2種類も考慮に入れなければ行けません。まとめると、以下の図になります。
 ただし、固形がんの場合は好中球減少の期間が短いとされるため、真菌のことを過剰に心配する必要はないと言われます。好中球の貪食能低下は放射線治療、化学療法、ステロイド使用、糖尿病、腎不全、肝不全などによりもたらされます。原虫やウイルスは後述の細胞性免疫により駆逐されるものなので、好中球の障害では感染症の原因とはなりにくいことが分かるかと思います。

d)細胞性免疫低下
 細胞内に寄生する微生物に対し、好中球や抗体、補体などは効果的な攻撃手段を持ちません。こういう時に出番なのが、マクロファージやTリンパ球、NK細胞と言った細胞性免疫となります。この細胞性免疫低下では、やはり細胞内寄生をする微生物が問題になることが多く、その原因は、悪性疾患や感染症、医療行為などが挙げられます。前者には移植や急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、腎不全、肝不全、糖尿病、ウイルス感染そのものなど。後者にはステロイドや免疫抑制剤の投与などがあります。

 細胞性免疫低下の状態で感染を起こす原因菌は多岐にわたります。細菌でもListeriaNocardiaLegionellaといった変わり種や結核、真菌、ウイルス、そして原虫などなど、非常に多いのが特徴。以下に図としてまとめましょう。
 好中球減少と比べると原因菌の同定に時間と手間とがかかってきますが、すぐに患者さんの命を奪うことは少ないので、腰を据えて鑑別していきましょう。細胞内寄生微生物の住みつきやすいリンパ節や骨髄の生検などが、侵襲的ではありますが診断のため重要となってきます。

e)液性免疫低下
 B細胞と抗原となる微生物との反応、免疫グロブリンを産生する形質細胞への変化などを指します。細胞外の細菌除去として機能します。脾臓は多くの抗原が通過し、また免疫グロブリンを産生し、免疫グロブリンが微生物に作用すし、免疫グロブリンによりオプソニン効果を受けた微生物を排除する場所です。また、莢膜を持つ細菌やグロブリンが結合していない微生物を除去します。よって、脾臓の機能障害や摘出は液性免疫にとっては屋台骨を失いかねない事態なのです。

 液性免疫低下の原因は、成人では多発性骨髄腫や慢性リンパ性白血病、造血幹細胞移植、HIV感染、脾臓の摘出や機能低下が挙げられます。特に脾臓の摘出、機能低下を来たしている患者さんの感染症は緊急事態です。摘出歴や機能低下を来たす疾患があれば、大事に扱いましょう。

 感染症の原因微生物には、莢膜を持つS. pneumoniaeH. influenzaeが多くを占め、3番目に重要なものとしてN. meningitidisが挙げられます。その他、Salmonellaや腸内細菌科、Bacteroides、イヌとの接触があればCapnocytophaga canimorsusというGNRも考慮。ウイルスではエンテロウイルス、原虫ではGiardiaなども可能性として浮上してきます。

2)感染臓器と微生物の理解
 感染臓器は、患者背景から得た知識と、問診と診察との組み合わせで多くの場合は知ることが出来ます。もちろん、必要な場合は検査をします。全てを問診と診察で済ませるのは無理なので、適切に検査を使います。この適切というのが難しいんですけどね。注意点は、検査結果はこれまでの情報から推測されるべきもので、予想外の結果が出たら必ず問診と診察に立ち返るということです。検査結果を盲信すると、振り回されてしまいます。また、どんなに頑張って感染臓器を検索しても見つからない時は、自信を持って「分からない」と言いましょう。青木先生の言うとおり、分からないことは、通常の感染症ではないことを示します。これは”不明”熱だなと定義することで、次の一歩を踏み出せます。

 微生物については、これまでの説明で大まかな理解が出来たかと思います。まずはどの菌がどこに常在しているかを知る必要があります。そしてどの様な臓器に感染を起こすのが得意かを知り、症状や診察、検査の所見なども併せて理解しておきましょう。特に患者背景と感染臓器とをセットにすることで、原因微生物との関係性がより色濃く見えてきます。


次回が感染症の最終回ですが、検体の理解から進めてみます。
by m03a076d | 2012-02-14 20:41 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
救急外来で使用する検査項目~くも膜下出血に対するCT
目次→コチラ

 くも膜下出血(SAH)は見逃したくない疾患の大御所です。さて、どうすれば良いのか…と思うもの。

 少し古いですが、2000年のNEJMでは、SAHに対するCTの感度は、発症から24時間以内では95%、3日で74%、1週間で50%、2週間で30%、3週間では殆ど0%という結果になりました(1)。

 時は移り2011年のBMJ。発症から1時間以内に頭痛がピークとなった患者さんを対象にして第3世代のCTで撮影した試験をしています。そこでは、発症6時間以内に撮影された場合、感度と特異度ともに100%となることが示されました(2)。ただし、読影は十分に訓練を受けた放射線科医が行っています。そして、6時間以降ではCTの感度が落ちることも記載されています。研修医や救急医では見逃しうるということは肝に銘じておきましょう。

 CTが空振りだった時の腰椎穿刺(LP:ルンバール)はどうでしょう。2008年のMayo Clinic Proceedingsでは、肉眼的なキサントクロミーは感度93%、特異度72%としています(3)。ここでは、肉眼とspectrophotometryとで見て、両者とも空振りなら帰宅、肉眼的に綺麗でもspectrophotometryで陽性なら赤血球のカウントをしなさい、と言っています。ちなみにここでも読影は放射線科医。

 同じく2008年のAnnals of Emergency Medicineでも、同じような結果。CTとルンバールを併せるとSAHに対する感度100%、特異度67%となっています。SAHと動脈瘤をエンドポイントにしても感度98%、特異度67%と十分な値。偽陽性が多いのは、ルンバールでの赤血球カウントでの陽性を5×10^6 RBCs/Lとしており、traumatic tapも陽性判定になるため。やはりCT空振りでも疑わしければルンバールを厭わない姿勢が大事。ルンバールの適応は、「しようかどうしようか」と迷った時点です。困るのがCTで空振ってルンバールで微妙な時。この時は安全のためにもSAHあり、と判断して専門医にコンサルトすべき。

 林先生のStep Beyond Residentには、キサントクロミーを肉眼で見ると半数は見逃す、とありますね。やはりカウントまで持って行くのが良いと思います。髄液を採取する試験管も1本のみでなく3-4本にするのが適切で、traumatic tapなら段々血の赤い色は薄まってきますが、SAHなら一貫して同じ色となります。そして、SAHでは何らかの心電図異常が80%の患者さんに出ると言います(特に有名なのがcerebral T waveです)。意識障害で心電図異常があっても、原因は頭ということもあるんです。同じ様に、SAHが原因による神経原性肺水腫という病態もあります。意識障害でレントゲン撮ったら肺水腫と来たら「心不全」と言いたくなりますが、意外な落とし穴になります。

 最近はMRIを撮ることもありますね。微量の出血ではFLAIRが有用では?とも言われていますが、これは今後の検討が必要。FLAIRにはCSF artifactがあるため、それがSAHへの感度と特異度に干渉します。しかし、新しいCube-FLAIRがそのアーチファクトを抑えるため、それによりその問題を解決できるかもしれません(5)。ただ、安全に除外するにはMRIにせよCTにせよ、空振りでなお疑わしければルンバールは絶対に必要でしょう(患者さんの安全にも、医療者の安全にも)。ただ、亜急性期や慢性期に入ると、MRI、特にT2*が有用と言われます。

 画像以前の段階で否定するにはどうするか?2010年のBMJにちょっとしたルールが掲載されました(6)。救急を受診した16歳以上の患者さんのうち、神経学的障害がなく(GCS15)非外傷性の頭痛であり、痛みの強さが最大になるまで発症から1時間かからなかった、または頭痛によって失神したという人々を対象としています。

☆Rule 1
Age >40
Complaint of neck pain or stiffness
Witnessed loss of consciousness
Onset with exertion

☆Rule 2
Arrival by ambulance
Age >45
Vomiting at least once
Diastolic blood pressure >100 mm Hg

☆Rule 3
Arrival by ambulance
Systolic blood pressure >160 mm Hg
Complaint of neck pain or stiffness
Age 45-55

※これらの各ルールにおいて、1つでもYesがあれば高リスクで検査が必要、すべてNoだった患者は低リスクと判断。

 SAHに対し3つのルールの感度は全て100%でした。特異度はルール1:28.4%、ルール2:36.5%、ルール3:38.8%であり、CTとルンバールのどちらかまたは両方を行うべき患者の割合は、ルール1:73.5%、ルール2:65.8%、ルール3:63.7%という結果。

 完全なものというのはなく、この感度も盲信してはいけませんが、参考にしてみるのも良いかと思います。


☆参考文献
1) Avoiding pitfalls in the diagnosis of subarachnoid hemorrhage. N Engl J Med. 2000;342(1):29-36
2) Sensitivity of computed tomography performed within six hours of onset of headache for diagnosis of subarachnoid haemorrhage: prospective cohort study: BMJ 2011;343:d4277 doi: 10.1136/bmj.d4277
3) Thunderclap Headache and Normal Computed Tomographic Results: Value of Cerebrospinal Fluid Analysis: Mayo Clin Proc. 2008; 83(12):1326-1331
4) Is the Combination of Negative Computed Tomography Result and Negative Lumbar Puncture Result Sufficient to Rule Out Subarachnoid Hemorrhage?: Ann Emerg Med. 2008 Jun;51(6):707-13. Epub 2008 Jan 11.
5) 3D Fluid-Attenuated Inversion Recovery Imaging: Reduced CSF Artifacts and Enhanced Sensitivity and Specificity for Subarachnoid Hemorrhage: AJNR Am J Neuroradiol. 2011 Dec;32(11):2054-60. Epub 2011 Sep 15.
6) High risk clinical characteristics for subarachnoid haemorrhage in patients with acute headache: prospective cohort study: BMJ. 2010 Oct 28;341:c5204. doi: 10.1136/bmj.c5204.
by m03a076d | 2012-02-14 19:43 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
救急外来で使用する検査項目~脳梗塞に対するMRI
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 脳梗塞ischemic strokeを疑った時に、MRIを撮るべきかどうか?撮って空振りなら脳梗塞はないと言えるのかどうか?という問題はいつでも出てくるものです。大きく言うと、脳梗塞に対するMRIやCTの感度特異度はどのくらいか、ということ。知っておいて損はない知識と思います。

 2007年Lancetにある、有名な報告を引っ張り出してみます(1)。

 この図からも分かるように、急性脳梗塞に対する尤度比は、発症3時間以内でCTはLR+∞、LR-0.88であり、MRIはLR+9.1、LR-0.3と言う結果でした。よって、MRI(拡散強調を含む)を撮ってもLR-0.3という数字からは全く除外に向かないことが分かります。12時間以内に広げてもMRIのLR-0.2であり、12時間以降でやっとLR-0.08となり、ようやくLR-<0.1を弾き出せます。全時間を通して、CTのLR-は全く使えません。たまに「発症から6時間経ったらCTでも見つかるだろ」という人もいますが、それは残念ながら真実ではありません(もちろん、可能性はゼロとは言いませんが)。しかもこの論文ではテント上下を併せた脳梗塞を扱っているので、テント下の脳梗塞であれば更に数字は悪いものになるでしょう。ちなみに、脳出血に対する感度特異度は、MRI81%と100%(LR+∞、LR-0.19)、CT89%と100%(LR+∞、LR-0.11)となっています。

 この論文では、MRIの方が数字的に優位なので脳卒中を疑ったらMRIを撮れ、と結論付けていますが、それは間違いかもしれません。私たちは、脳梗塞はMRIでは決して除外できないと知るべきでしょう。救急外来ではコンサルト先から撮るように言われるので撮っても良いですが、臨床的に脳卒中が疑わしく低血糖を除外しCTで脳出血がなければ“臨床的に脳梗塞である”という判断を下しましょう。これはMRIが空振りでも不変。特に画像検査は盲信してしまいますが、決してそうではなく、臨床的に思考することが求められます。病歴と診察で出血性脳卒中と虚血性脳卒中とをどの程度アタリを付けられるかは、2010年のJAMAに掲載されています。あまり強力な因子はありませんが、一度ご参照ください。

 脳梗塞のCTと言えばearly CT sign(脳実質所見としては皮髄境界消失、レンズ核の不明瞭化、脳溝の消失がある)ですが、非可逆性の目安として注目されています。しかし、客観性はやや劣り、読影者間での判定のばらつきが比較的大きいことが問題。熟練医と研修医とではかなり差があります。熟練医では感度61%、特異度65%であるのに対し、研修医では感度46%、特異度56%との報告もあります(2)。


☆参考文献
1) Magnetic resonance imaging and computed tomography in emergency assessment of patients with suspected acute stroke: a prospective comparison. Lancet 2007;369:293.
2) CT and diffusion-weighted MR imaging in randomized order: Diffusion-weighted imaging results in higher accuracy and lower interrater variability in the diagnosis of hyperacute ischemic stroke. Stroke 2002; 33:2206-2210.
by m03a076d | 2012-02-11 20:14 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
感染症診療 Starter & Booster:第12回~「カビ」を分類する
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 抗真菌薬について軽く触れたので、今度は真菌を学びましょう。”カビ”と一括りにせず、きちんと分類。これも簡単に済ませておきます。

 真菌感染については特に免疫状態を考慮する必要があります。このような”下調べ的”な患者背景という要素はこれまでもちょくちょく述べていましたが、詳しくは後述する『感染症診療の原則とは?』という項目で触れます。しかし真菌のまとめを述べると言う都合上、ここでも少し話題にします。まずはCandidaから。

1) Candida
 真菌でヒトに常在しているのはCandidaで、皮膚・口腔・腸管・泌尿器などに幅広く存在しています。ということは、感染症としては皮膚・粘膜といった表在性のものと身体の中の深在性のものとに分かれそうだと想像がつきますね。

 表在性は基礎にHIV感染、ステロイド、糖尿病と言った細胞性免疫障害のある時に多く発症します。深在性は持続する好中球減少症や広域抗菌薬使用でも症状が改善しない場合、既にCandidaが血液以外の検体培養で検出されている状態で多くのカテーテルやドレーンが入っている場合などが発症のリスク。この深在性ではターゲットになる臓器に特徴があり、血流感染(カテ感染、心内膜炎)、肝・脾膿瘍(播種性カンジダ症)、尿路感染、眼内炎、髄膜炎、骨髄炎といった疾患を起こしやすくなります。眼内炎は知らず知らずの内に発症していることがあるので、カンジダ血症を見たら眼科医に診察をお願いしましょう。また、肺は苦手なので、肺炎を起こすことは極めて稀とされています。

 問題点は、診断の難しさです。培養でCandidaが検出された時にそれが単なる定着なのかそれとも本当に感染症なのか、この見極めが大事になります。特に広域抗菌薬がドンドン使われていたら、他の菌が死滅してCandidaだけがポツンと残るということもあります。定着か感染か、これを判断するにはCandidaの性格を知る必要が出てきます。細菌感染で学んできた知識を使うと、知る必要のあるものは、Candidaの好きな臓器、そして感染のリスクファクター。これを把握しましょう。臓器は今しがた述べたので、リスクファクターを紹介します。

・広域抗菌薬の使用既往
・長期の病院滞在やICU滞在
・ステロイド使用などの免疫抑制、悪性腫瘍、糖尿病、HIV感染症
・栄養不良
・手術後、特に腸管や心臓
・熱傷、未熟新生児
・カテーテル使用、中心静脈栄養
Candidaの定着状態

 上記となります。これを見ると、細胞性免疫低下や好中球低下といった”内科的”なハイリスクと、バリア機能の異常である”外科的”なハイリスクに分けられるということが分かると思います。この2つのリスクを参考にして定着か感染かを判断。また、一見健康そうな人にCandida感染、特に表在性の感染症が多いですが、それを見たら、必ず背後にHIV感染などの免疫抑制がないかを見なければいけません。

 ちなみにカンジダスコアCandida scoreというのもありまして、どういう時にCandidaを定着として見ることが出来るか、という1つの指標になっていまして、以下の式からなります。

Candida score = 1×(複数ヶ所colonization)+1×(手術)+2×(severe sepsis)+1×(TPN)

 論文では、セッティングが好中球減少のないICU入室患者さん。3点以上をカットオフにした場合、侵襲性カンジダ感染症の陽性的中率13.8%、陰性的中率97.7%となっています。2点以下なら様子見可能、ということが示唆されるでしょうか(Usefulness of the "Candida score" for discriminating between Candida colonization and invasive candidiasis in non-neutropenic critically ill patients: A prospective multicenter study. Critical Care Medicine. 37(5):1624-1633, May 2009)。

 さて、一口にCandidaと言っても、albicansとnon-albicansに分類され、後者には多くの種類があります。通常はalbicansの病原性が強くて多くのカンジダ症の原因になります。しかし、non- albicansでは耐性が問題になってきます。どの様な抗真菌薬がどの様なCandidaに効くか、青木先生による表を用いましょう。
 この様な性格になります。患者背景を押さえて、感染か定着かの区別。そしてCandidaの種類による抗真菌薬の効果。これを認識しておきましょう。臨床的にリスクが揃っており広域抗菌薬の治療でも症状が改善しなければ、β-D-グルカンの値にとらわれず抗真菌薬を開始するという割り切りも大切です。

2) Aspergillus
 Aspergillusの病態は4つ。

・単なる定着としてのアスペルギローマaspergilloma
・アレルギー(ABPA:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症。喘息患者に発症。↑IgE、↑好酸球)、
・慢性壊死性アスペルギルス症
・侵襲性肺アスペルギルス症

 ただし多少のオーバーラップは存在し、定着状態にアレルギーや侵襲病変が重なることも多いです。ここでは最も重篤な侵襲性肺アスペルギルス症について軽く述べます。

 好中球減少や細胞性免疫異常が遷延する患者はハイリスク。具体的には

・長期、重篤な好中球減少症
・臓器移植(特に肺移植)
・骨髄移植
・HIV感染
・ステロイドや免疫抑制剤の使用
・血液疾患(白血病、リンパ腫)

といったものが挙げられます。ただし固形がんの化学療法ではAspergillusは非常に稀。この時はCandidaが問題になります。

 Aspergillusは環境のどこにでも存在し、通常はこの分生子を吸入することで感染。ということは、が主なターゲットだと分かりますね。病院の改築時などは分生子が大量に舞うので、集団発生を起こすことがあります。この肺から副鼻腔に広がると、そこから中枢神経へと到達。後は肺から血管に浸潤していき全身に広がることもあります。大雑把に述べましたが、この様に感染の広がりを覚えましょう。他の感染ルートとしては、傷口などから直接に皮膚や角膜へ到達することもあります。

 この疾患は極めて非特異的な症状であり、胸部CTのhalo signは他の真菌症やP. aeruginosaでも認めると言われます。ガラクトマンナン測定も、どういう状況で、何を考えて検査するかで有用性が変わってくると思いますし、ピペラシリン・タゾバクタムの使用で偽陽性になることもあるそうです。

 血液培養からほとんど検出されないことが知られています。よって、上記ハイリスク患者ではまず疑うことが大事。場合によっては経験的に治療を開始しなければならないこともあります。理想的には組織を持って来ること。生検やBALで菌糸を見つけることが大事になります。

3) Cryptococcus
 土中、鳩の糞の他、野菜などにも存在します。吸入することで感染します。20%ほどは免疫不全がなくとも見られるのですが、特にリスクとなるのが細胞性免疫不全です。ステロイド投与や移植、悪性リンパ腫、糖尿病、そして何といってもHIV感染。吸入するということは肺に病変を作ります。しかし、細胞性免疫に障害があると播種性感染症となり、特に髄膜炎が多くなります。診断は血清や髄液の抗原検査、培養によってなされます。

4) Zygomycetes
 いわゆる”ムコール症”の原因真菌。彼らは広く自然界の土壌に存在します。病原性が低いので、感染は極めて稀。著しい免疫抑制の患者さんに発症することがあります。感染のリスクファクターは、Aspergillusのリスクに加えて

・糖尿病(特にDKA)
・デフェロキサミン(鉄キレート)の使用
・外傷、重症熱傷
・栄養障害

となります。侵入経路は吸入によるものが多く、他には熱傷や外傷からの侵入も考えられます。病型がいくつか分かれていて、それを以下に記します。

・鼻腔から脳の病変(rhinocerebral type)
・肺病変(pulmonary type)
・皮膚病変(cutaneous type)
・胃腸病変(gastrointestinal type)
・中枢神経系病変(CNS)
・その他の病変(miscellaneous type):心、骨、腎、膀胱、カテーテル

 これらの中でどのタイプになりやすいかは、基礎疾患により予想が付きます。糖尿病患者やデフェロキサミン使用ではrhinocerebral typeが多く、長期間の重篤な好中球減少症ではそれに加えてpulmonary typeも多くなります。栄養障害があればgastrointestinal typeのリスク。

 ムコール症は血管侵襲性が強いので、Aspergillusと同じような進展をします。鑑別も重要で、組織を持って来ることと培養することでなされます。Aspergillusと同様に血液培養は殆ど陰性。

 基本的に効く抗真菌薬はアムホテリシンBのみなので、他の抗真菌薬を使用している時にも発症することがあり、注意を要します。特にボリコナゾール投与中のBreakthroughとして出てくることが多くなりました。治療については、外科的切除も併せて行います。どの真菌症にも言えることですが、治療の基本は可能ならば免疫抑制状態の解除です。
by m03a076d | 2012-02-07 23:22 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
輸液 Starter & Booster:第8回~おしまいのどんぶり勘定
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 炎症概念を輸液に持ち込んで、そして腎臓をヘタらせない。これが達成できるように適切な輸液を心がけたいものです。何も一発でピタリと当てる必要はなくて、方向性を間違えないことが大事です。京都から札幌に行く時に大間違いをして福岡の方向を選ばなければ大丈夫。一回で札幌に行くのは凄いですが、新潟や宮城を経由しながらでも到達すれば良いのです。日々修正していきましょう。

by m03a076d | 2012-02-04 18:09 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(2)
感染症診療 Starter & Booster:第11回~抗真菌薬について軽く
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 せっかくなので、抗真菌薬(ここでは全身投与用のものを指します)についても触れておきましょう。大きく分けると4種類。アゾール系、キャンディン系、ポリエンマクロライド系、ピリミジン誘導体です。例を挙げると

1)アゾール系
フルコナゾール(ジフルカン®)、イトラコナゾール(イトリゾール®)、ボリコナゾール(ブイフェンド®)など。それぞれスペクトラムが異なるのが注意点。

2)キャンディン系
ミカファンギン(ファンガード®)

3)ポリエンマクロライド系
アムホテリシンBデオキシコール酸塩(ファンギゾン®)、アムホテリシンBリポソーム製剤(アムビゾーム®)の2つ。後者の方がより安全性高い。

4)ピリミジン誘導体
フルシトシン(アンコチル®)

となります。抗真菌薬は他剤との相互作用の多いものがかなりあるので、常にそれを気にしながら用いましょう。

 そして真菌も少し分類しましょう。酵母と糸状真菌の2種類に分割。酵母にはCryptococcusCandidaTrichosporonなど。糸状真菌にはAspergillusFusariumZygomycetesPseudallescheriaなどがあります。Histoplasmaを代表とする日本ではレアな二形性真菌は、今回省きました。Candidaはその中でも色々種類があり、抗真菌薬の感受性が異なります。

 それを踏まえた上で、主な抗真菌薬のスペクトラムを青木先生の本から抜粋します(クリックで拡大)。
 こう見ると、アゾール系のスペクトラムとCandidaの種類を押さえるのが少し大変という感じ。抗真菌薬の詳細は他書にお任せするとして、ここでは本当に軽く眺めてみましょう。Candidaの種類への作用は、後でまとめて示します。

1)アゾール系
 真菌細胞膜の原料となるエルゴステロールの合成を阻害します。フルコナゾール(ジフルカン®)、イトラコナゾール(イトリゾール®)、ボリコナゾール(ブイフェンド®)などがあります。

 イトラコナゾールはやや影の薄い存在。堂々と第一選択として用いることは少なく、口腔カンジダ症や食道カンジダ症といった軽度の真菌症か、他の抗真菌薬で思わしい効果を上げられなかった時に使用するという位置づけです。

 フルコナゾールは、あまり重症でない侵襲性カンジダ症やカンジダ血症に用います。水溶性が高く、髄液、硝子体、尿路、組織液、唾液に移行しやすいと言われています。よって、それを意識した病態への治療に用いることになります。本薬剤は抗真菌薬の中では珍しく、腎排泄になっています(あとはフルシトシン)。Candidaでは、C. kruseiC. glabrataが耐性を良く示します。

 ボリコナゾールは、フルコナゾールよりも脂肪親和性が強くなっており、アゾール系では最も広いスペクトラムを持ちます。この売りは何と言ってもAspergillusに効くという点。更にアムホテリシンBの効かないAspergillus terreusFusarium spp.、Pserdallescheria boydiiにも効果があります。このFusarium spp.に効く抗真菌薬はあまりないので、重要。ただし、Zygomycetes(接合菌)には効きません。よって、推奨される病態は、まず侵襲性アスペルギルス症。これを覚えましょう。第一選択として使用されます。

2)キャンディン系
 日本にあるのはミカファンギンのみ。真菌細胞壁のβ(1,3)-D-グルカンの合成を阻害します。基本的にはCandidaAspergillusのための抗真菌薬。Candidaに関しては、アゾール耐性のものにも効くことが多いので、その際に出番となることが多いです。ただし眼内への移行性は悪いので、Candida眼内炎の際は使用しない方が良いです。またAspergillusではアムホテリシンBの効かないAspergillus terreusにもバシッと効いてくれます。ただ、ボリコナゾールが出てからはAspergillusに対してミカファンギンを積極的に使う状況は少なくなった感があります。意外かもしれませんが、他の抗真菌薬が効くCryptococcusには無効です。

3)ポリエンマクロライド系
 アムホテリシンBデオキシコール酸塩とアムホテリシンBリポソーム製剤の2つが日本にあります。後者の方が副作用、特に腎障害が軽くなっています。ただし尿路への移行性は前者よりも劣ると言われています。アムホテリシンBは真菌細胞膜のエルゴステロールに直接干渉して抗真菌作用を発揮。古い薬ですが、まだまだ高い信頼を得ています。

 アムホテリシンBはスペクトラムがかなり広いため、カバーしない真菌を挙げます。CandidaではC. lusitaniaeが代表例。後はPseudallescheria boydiiFusarium spp.、Trichosporon beigelliAspergillus terreusA. flavusなど。

 使われる状況は非常に多く、特にZygomycetesに効くのは原則的にアムホテリシンBのみと考えて良いです。ただしアゾール耐性カンジダ症に対してはミカファンギンも使用されることも多くなっています。副作用としては発熱や悪寒というものがあり、これにより治療をミスリードしてしまうことも。きちんと臓器特異的な指標を追って、発熱に揺さぶられることのないようにしましょう。

4)フルシトシン
 細胞内に取り込まれ、そこで何と抗癌剤として使用される5-FUに変換され、作用を発揮します。移行性は良く、大体どこにでも広がります。また、フルコナゾールと同じく腎排泄という特徴があります。耐性が出やすいので、他の抗真菌薬との併用で用います。

 基本的にはCandidaCryptococcusに使用する薬剤。ただし、C. kruseiは自然耐性。臨床での出番はクリプトコッカス髄膜炎に対するアムホテリシンBとの併用です。重症のカンジダ症にも併用で用いて良いとするデータもあります。副作用で骨髄抑制があるのは覚えておきましょう。
by m03a076d | 2012-02-02 21:40 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
輸液 Starter & Booster:第7回~救急外来の輸液
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 病棟やICUでは様々な輸液製剤を使いこなし、かつ経口摂取のできない患者さんでは栄養輸液をすることもあると思います。場所を移し急性期のfirst touchとも言える救急外来ではどうでしょう?

 実は救急外来では、特に大人であればほとんど生食のみで戦えます!後は速度の調節ですね。刹那的な出会いの場である救急外来においては、まずは今この場での状態を改善することに大きな力を注ぎます。ショックの患者さんや、そこまで行かなくとも細胞外液の減少している患者さん。彼らの循環動態をまず安定化させましょう。仮に高Na血症でも、血清Na濃度が生食の154mEq/Lを上回るのであれば、生食ですら血清Na濃度を下げますし、またそれほどの高Na血症であれば細胞外液量も相当持って行かれているので循環を立て直す意味でも生食は適切と言えます。救急外来では生食無双なんですね。

 あれ、でも前に生食だと高Cl性の代謝性アシドーシスが起こると言ったじゃないか、と思うかもしれません。確かにそうです。でも生食のみで起こるわけではなく、しかも起こるのもかなり大量に入れた時。救急外来で使う量ではそうそう起こるもんじゃないのでした。

 じゃあ細胞外液がいっぱいいっぱいの代表選手、心不全はどうするんだ?と思うかもしれません。心不全なら5%ブドウ糖液を選択する様に教わっている人も多いでしょう。しかし、仮に5%ブドウ糖液を1L入れても、血管内には85mL入ります。と言うことは、5%ブドウ糖液を60mL/hrで落とすことと生食を20mL/hrで落とすことは同じことなのです。確かにNaは排泄されにくいのですが、心不全の患者さんではADHが過剰なことが多く、救急外来に来るような急性期では尚更です。よって、水排泄もなかなかされません。ということは、低張液を投与すると低Na血症になることが非常に多い、ということになりますね。「心不全=5%ブドウ糖液」と判で押したように対応させては時として足をすくわれかねません。

 非常に汎用性の高い生食。救急外来では速度を調節しながら使っていきましょう。
by m03a076d | 2012-02-02 21:17 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
診断推論 Starter & Booster:第11回~疾患そのものを知るという大前提
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 最後に、これまでお話ししたところから、救急外来のセッティングですが診断への流れを以下に示します(せっかくなので、クリックで拡大)。
 この流れが、感覚的アプローチを俯瞰することになります。図の説明を少ししてみましょう。

☆病歴前確率
 ここから勝負が始まるので、十分な情報を得ておきましょう。適切な主訴・患者背景から鑑別疾患群が想起されます。主訴からは鑑別臓器をヒントに見逃してはいけない疾患と良くある疾患を思い浮かべます。想起しづらい鑑別疾患は個別に暗記しておくのが良いでしょう。そして、それらにおける4つの要素(緊急性・有病率・年齢・個別性)という軸を以て順位付けします。この中には尤度比が分かっているものもあるので、それは知っておいて損はないでしょうね。主訴と患者背景では、犯人のアウトラインを被害者からある程度聞き出しておくと言えますね。これらはすべて、この段階での鑑別疾患群の基礎知識があってなされることで、その基礎知識を元に、実際に患者さんから情報を引き出し、考え、また引き出し、ということを繰り返して鑑別の確率をより確かにしていきます。図で言う基礎知識との照合ということになります。この照合は繰り返すという意識が大事なので、矢印はすべてのステップで双方向にしています。

☆診察前確率
 次は現病歴。これも闇雲に聞くのではなく、鑑別疾患群の典型的/非典型的な経過を頭に入れておかねばなりません。全部を知りつくすのは大変ですし、不可能でしょう。ある症状の有無には特定の疾患に特徴的なものがあります。尤度比で表現すると、この症状があること/ないことがこの疾患に対してどのくらいの尤度比を持つのかを知っておく、ということです。これを目標に疾患の勉強を。病歴の聴取では、研修医1年のうちは出来ればOPQRSTに則るのが聞き漏らしも少なくなると思います。特にOとTは見逃してはいけない疾患を考慮する上では念入りに聞きます。容疑者の顔の違いを整理して十分に知っておく、そして犯人のより細かな特徴を聞き、鑑別の順位付け、そしてさらに聞く。病歴で順位付けする、とは言いますが、実際これはかなり動的なもの。一回聞いて終わりではなく、聞いてる中でも順位の変動が頭の中で起こり、それによって聞く内容も変わってきたりします。絶えず照らし合わせ。それによって細かな違いも患者さんから聴取できます。図で言う経過知識との照合という奴です。

☆検査前確率
 診察も同様です。鑑別疾患群がそれぞれどういう診察項目で陽性・陰性となるのかを知っておきましょう。しかも、その診察結果がどのくらいのパワーを持つのか、換言すればどのくらいの尤度比を持っているのか、これを知ることです。特に救急外来ではTop to Bottomで診察というのは原則として行いません。鑑別となる疾患同士で違いが浮き彫りになるような項目を絞って行います。診察の所見いかんで、更にこの診察も追加、これはしなくても良い、などがわかってきます。診察知識との照合ですね。

☆検査後確率
 検査もそうですね。ついつい検査というのは結果が目に見えたり数字で出たりするので過信してしまい、また尤度比も病歴や診察に比べて研究されています。ですが、これまで積み重ねて出てきた検査前確率を無視せず、積分的な考えをしましょう。尤度比は、それのみを見るのではなく、一歩手前の確率と相談して行うべきもの。いくら尤度比が高い項目が引っかかっても、それまでの前確率が低ければ十分な根拠となりません。そして、検査項目の結果次第では、鑑別の順位が変わったり、更に検査が必要になったり、ということも起きます。これが検査知識との照合。

 背景情報、病歴、診察、検査。これらには尤度比の分かっていないものも数多くあります。そこをどう詰めるかが、感覚的確率アプローチでの“感覚”の要素でもあります。1つ前の項目でお話ししましたが、このアプローチではExperienceとEvidenceの両面から疾患を知るということが重要になってきます。鑑別に挙がる容疑者たちの顔をきちんと知らずして犯人を捕まえられるはずがないのです。これをいい加減にしか知らないと、最初に鑑別に挙げたとしても病歴や診察や検査で「違うかな」と弾いてしまったり「これだ!」と飛びついてしまったりすることになってしまいます。病名は知っているけどどういう病像をとるかあんまり良く知らない、というのでは全く役に立ちません。患者さんの話からとある容疑者の名前が想定された。でも、その容疑者の顔を知らなければ、患者さんに聞きようがないですね。患者さんは顔を表現することは出来ますが、その犯人の名前は知りません。“胸痛”という主訴から“自然気胸”という疾患名を鑑別として挙げても、「あなたの病気は自然気胸ですね?」と患者さんに聞いたって分かりません。捜査をするこちら側が、自然気胸について詳しく知っておく必要があるんです。

 診察前確率のところでお話ししましたが、各鑑別疾患の典型/非典型なコースを知っておき、それらの特徴の違いをはっきりさせておく、かつ“あいだ”としての問診を意識することが、適切な確率の配分へとつながります。診察前確率を大きく誤ると、いくら診察と検査の特性に熟知していても的確に診断に結びつきにくくなってしまいます。知っておくべきものは、有病率・緊急性・年齢・個別性を意識した病歴前情報、OPQRSTで整理された病歴、かつ有用な尤度比が得られている症状、これらです。鑑別に挙がる疾患がどういう病像を取りやすいのかは言うに及ばず、頻度は低いけれども取りうる病像も、特に「見逃してはいけない疾患」については熟知しておかねばなりません。そして、問診の際にはきちんと言葉の多義性を意識しましょう。日常語と専門語の意味を十分に知っておくべきです。その次に来るのが、先ほどもお話しした、正しい診察と検査の知識。

 私たちは似顔絵捜査官であるという例えをしました。容疑者である鑑別疾患群から犯人を探すには、それらの大きな特徴から理解し大まかに切り落としをし、詰めの作業を細部の特徴で行うことに尽きます。鑑別の対象になる疾患たちの像というものをどれだけそれらの間の差を意識して覚えておくかが、診断の鍵となるんです。結局は疾患の勉強か、と思うかもしれません。ですが、それを知らずして正しい病歴聴取は不可能ですし、勉強する部分も生きた知識が必要になってきます。鑑別疾患群の中に生まれる差をとらえましょう。

 感覚的確率アプローチとは、これまで述べたように、自分が鑑別に挙げた疾患の診断についての情報と、患者さんから引き出す情報との照合度合いを見るもので、お互いの情報をより詳しく知ることがその確率を上げる大きな要素となってきます。その中で、尤度比が出ているものについてはそれを適正に利用していきましょう。なので、疾患の情報についても正確に知っておき、患者さんからも上手く情報を引き出し、科学的な視点が得られているものの正しい知識を持っておく、この3点がとっても大事です。これらが噛み合わさって、診断が導かれてくると考えましょう。

 図を見て分かるように、医者と患者さんをつないでいるのは疾患の知識です。これがあって初めて相互作用がなされていくんです。診断への道に素晴らしいファンタスティックな方法はありません。知識というのはとても大事なものなんですよ。

 最後に、医者の神様であるOsler先生の言葉を紹介します。


He who studies medicine without books sails an uncharted sea, but he who studies medicine without patients does not go to sea at all.
患者を診ずに本だけで勉強するのはまったく航海に出ないに等しいと言えるが、本を読まずに疾病の現象を学ぶのは海図を持たずに航海するに等しい


 
 正確な海図を持つことが、安全な航海につながります。その海図の重要性や着目点が、このレクチャーで少しでも分かってもらえたらと思います。

 これで診断推論のお話はおしまいです。お疲れ様でした。
by m03a076d | 2012-02-02 21:03 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)
救急外来で使用する検査項目~NT-pro BNP
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 救急外来では、呼吸苦の患者さんの鑑別の1つに急性心不全がありますが、診断に有用なマーカーとしてはNT-pro BNPが挙げられます。BNPはその日のうちに結果が戻ってきませんが、NT-pro BNPは30分くらいで返ってくるのが強み。臨床症状のみで診断するよりも、このマーカーを組み合わせた方がより正確な診断が出来るとされています。しかし、このマーカーは、特に年齢と腎機能に大きく影響されるということを知っておきましょう。以下は、救急外来に呼吸苦でやって来た患者さんを対象としたものです。

 年齢について、2006年のEuropean Heart Journalを参照します(1)。NT-proBNPのカットオフ値は、50歳未満、50-75歳、75歳overでそれぞれ450、900、1800 pg/mLとされており、急性心不全に対する感度90%、特異度84%なので、LR+5.6、LR-0.12という尤度比と計算され、年齢別に値を設定することで有用性が再確認されました。このマーカーだけで云々言えませんが、臨床状況と併せて考えると優秀なマーカーになってくれます。また、どの年齢でも300を除外判定とすると、この場合は感度99%、特異度60%となり、LR+2.5、LR-0.017というすばらしい陰性尤度比を誇り、ほぼ除外できます。

 腎機能障害がある場合は、解釈が非常に難しく、注意が必要であるとされています。データが不十分であり、決め手となるカットオフ値が存在しません。色々な論文が色々なことを言っている状況。1つの目安として、2006年のJournal of the American College of Cardiologyに掲載された論文を見てみます(2)。そこには、GFR<60でカットオフを1200にした場合、感度89%で特異度72%(LR+3.2、LR-0.15)となったと記載されています。個人的な意見ですが、eGFR<30の場合は強力なマーカーとして扱わない方が良いかと思います。本当に1つの参考程度にとどめておくのが無難かと。

 慢性心不全の急性増悪に関しては、以前の値と見比べることが大事となります。以前の値がない場合は、今回の結果だけで判断するのは難しいと考えておきましょう。

 また、急性心不全になるということは、その背後に基礎となる出来事があります。「心不全」というだけで安心せず、なぜこの様な事態になったのか、これを確認することで救急外来における初期治療に幅が生まれます。

 治療に頻用される利尿薬のラシックスですが、これはX線や肺エコーで肺水腫を見てすぐ使用するのではなく、きちんと心窩部走査で下大静脈が強く張っていることを確認してから使用すべきです。肺水腫は溢水のみで起こるわけではないため(意外とこの事実は知られていません)、下大静脈を見ておくという癖を付けましょう。下大静脈が張っていない状態でラシックスを使用するとあっという間に患者さんの循環血漿量が持って行かれちゃいます。

 心不全診療への目安として、Nohria分類というものがあります。一度見ておくとチェックポイントが分かると思います。


参考文献
1) NT-proBNP testing for diagnosis and short-term prognosis in acute destabilized heart failure: an international pooled analysis of 1256 patients: The International Collaborative of NT-proBNP Study. Eur Heart J (February 2006) 27 (3): 330-337.
2) Renal Function, Congestive Heart Failure, and Amino-Terminal Pro-Brain Natriuretic Peptide Measurement: Results From the ProBNP Investigation of Dyspnea in the Emergency Department (PRIDE) Study. Journal of the American College of Cardiology, Volume 47, Issue 1, 3 January 2006, Pages 91-97
by m03a076d | 2012-02-01 00:55 | ★思うこと・医学一般 | Trackback | Comments(0)